昨日と明日の間(1954年)

昨日と明日の間
                      

作品紹介

別府航路の船の中で、白戸魁太郎は自殺を計った美貌の人妻彩田萄子と知り合った。白戸には弾正れい子という鉄火肌の女があり、萄子の夫周平は関西の著名な実業家で、白戸は計画中の民間航空会社の出資者に此の人物を選んでいた。萄子は金と仕事以外目のない夫に嫌悪の情を抱き、八年来の恋人四宮乙彦を想っていた。しかし四宮は近々山谷まゆみと結婚する筈だった。白戸の新しい事業はれい子の紹介によるパイロット上りの荒木三吉、佐伯、玄公達の助力で着々と完成されて行った。萄子はれい子に呼ばれて白戸と口を聞かない事を誓わされる。が、白戸と萄子はお互いに何時か惹かれているのを感じていた。或る日、芦屋の彩田家にれい子の子分チャナ公が訪れ、香炉園の海岸で萄子はれい子にぶたれた。「白戸さんが好きです」ぶたれながら萄子は言いつづけた。白戸が創った前夜祭の席上、周平と萄子を前にして白戸はれい子と結婚すると言いきった。何もかもを知ったれい子は、瞬間白戸と別れようと思った。仁義をきるれい子の頬を涙が流れる。数日後、白戸は一人新しい仕事を求めてマニラへ立った。その手には萄子からの手紙があった。「私はもう一度貴方様にお目にかかれそうな気がします。いつか遠い遠い或る晴れた日に--」

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