美徳のよろめき(1957年)

スタッフ・キャスト

製作:大塚和
監督:中平康
助監督:西村昭五郎
脚本:新藤兼人
原作:三島由紀夫
撮影:岩佐一泉
音楽:黛敏郎
美術:松山崇
録音:神谷正和
照明:藤林甲
編集:辻井正則
配役    
倉越節子:月丘夢路
倉越一郎:三国連太郎
倉越菊夫:青砥方比呂
土屋:葉山良二
牧田与志子:宮城千賀子
牧田:信欣三
飯田:安部徹
とみ:高友子
藤井景安:千田是也
伯父:汐見洋
伯母:相馬幸子
叔父:伊藤寿章
叔母:原恵子
紀子:堀恭子
元子:堀川京子
祖母:立花泰子
土屋省三:芦田伸介
マダム秋子:渡辺美佐子
幼稚園の先生:高田敏江
女優のような女:南田洋子
指圧師:西村晃
女医:北林谷栄
看護婦 :竹内洋子
ボーイA:二谷英明
ボーイB:須藤孝
ボーイC:林茂朗
洗濯屋の小僧:草薙幸二郎
ナレーター:高橋昌也

製作

日活

作品紹介

名門の家に育ち、倉越一郎と親のきめた結婚をした節子は、幼稚園に通う男の子の母としても、平凡な生活を送っていたが、その中には自分でも知らぬ官能の天賦がひそんでいた。夫婦のいとなみも間遠くなったこの頃、彼女は結婚前に避暑地で、拙劣な接吻を交した土屋という青年を思い出し、彼と再び交際をもつようになった。節子は道徳的な恋愛、空想上の恋愛をすることにきめ、それ以上は青年と深入りしまいと考えていた。だが二度目のあいびきの折、「真裸で御飯を食べたら」という土屋の話をきき、その情景を空想しながら眠れぬ一夜をすごしたが、間もなく夫に偽って土屋と旅に出たホテルで、二人は肉体的な関係をもつようになり、真裸の朝食をとって以来、節子は土屋と会うたびに自分の体を男にまかせた。そのうち彼女は夫の子供を懐妊したが、「不義の受胎」として掻把し、土屋の前で酔いしれたあげく、夫にその場を発見されたり、快楽と苦痛の逢引を重ねていたが、たまたま友人の与志子が情夫に刺されたという新聞を読み、その夫が会社を辞めたときくと、そろそろ土屋との関係を断とうと考えはじめた。それは夫のためでも家のためでもない。自分のつくり出した恋愛を、自分の手で断とうという、一つのためしであり、土屋と会うたびに彼女は「別れ」という言葉を口にした。土屋もそういう節子の気持を理解し、一度の接吻を交しただけで大阪に去った。だが、男がいなくなってしまうと、節子はこの「別れ」が想像以上に苦しいものであることを知った。その苦しさを、激しい恋の手紙に書きつらねたが、その手紙は彼女の手で破りすてられた。

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